日本全国を旅する風俗評論家・岩永文夫氏が各地の裏風俗や温泉、酒、うまいもの、観光地などを紹介する旅情いっぱいのコラムです!
44.久留米・花畑(福岡県)
福岡県は、その昔から本番OKの裏フーゾクの多い県で知られている。というか男の遊び場の多い九州地区のなかでも、南端の沖縄県と双璧をなすほどの県である。つまり男性天国だったところなのだ。それも、本番OKとか裏などと敢えて言うまでもなく、敗戦(太平洋戦争)の十三年後までは遊びといえばヤルしかなかったのだ。
福岡では、市内の中洲や雑餉隈(ザッショノクマと読みませう)それに小倉をはじめ北九州の各街、さらに久留米の花畑・・・と色街が目白押しなのであった。
しかし、このうちの多くは都市再開発という醜名(断わっておくが決して美名ではない!)のもと、勢力を削がれ取り潰されるか、規模を極端に縮小されるか、いずれにしろ旗色の全く悪い状態が続いている。ガンバッ!
ということで今回は、激励かたがた西鉄福岡駅から急行で50分ほどで行ける久留米の色街であった花畑に行ってみることにしたのだ。こちら久留米駅のすぐ次の駅で急行も特急も停車する足の便の良い街なのである。
ここで簡単に御当地の能書きを言っておくと、明治の中頃に帝国陸軍の駐屯地が置かれて以来、軍人さんたちが我が物顔で町のなかをウロつく土地となった。それが敗戦後になっても自衛隊に受け継がれて同じく駐屯地がある。余談だが現在ではあまり偉そうな顔をして街中を歩きまわっている手合いはいないようである。
でも面白いことに全国、自衛隊のあるところには必ず本番OKのプレイスポットが、こっそりと用意されている。北海道の旭川だろうが、石川県の小松だろうが、静岡県の浜松だろうが同様だ。だってハケ口がないと隊員の皆さん困ってしまうでしょう。隊内の雰囲気が不穏なものになってしまうらしい。
ここでまたまた余談だが、ご当地の場合、さらに警察関係者もそれなりの数出入りして遊んでいるという。「だから西町(花畑の裏フーゾクゾーン)のチョンの間は、ジェッタイに無くなりまっシェーン」と地元のオジイさんは強調する。
言ってみれば、久留米の花畑こと西町にはこれからも裏のフーゾクが、在り続けるということなのだ。とはいっても現在、西鉄の花畑駅に降り立ってみても一見して「これがフーゾク街かよゥ」というくらいスッキリのっぺら坊な駅前風景しかない。チマッとしたロータリーと、道路に沿ってのマンション群。面白くもおかしくもない風景である。
ところがフーゾク・ビジネスは、しぶといのである。こんなペンペン草しか生えないような無毛の地、いや失礼しましたキーを叩き間違えました、不毛の地でした。にもフーゾクそれもチョンの間業が根付いている。
以前は十数軒はあったろう、それ用の旅館が今も5軒ほど営業を続けているのだ。駅前に立って、いくらキョロキョロしても目差す旅館は発見できない!でもフラリフラリ町を歩いてみると、細い路地の奥に「旅館」の看板が出てなければ気付かないようなポイントが存在する。
こんな家に、いきなしチン入しても、応対に出たオバさんに、まずは訝しがられる。でもこちらに、害意も敵意もないことをニコニコしながら話しているうちに。オバさんのほうでも「どうやらヤバイ筋(K察でも8クザでも)の人間ではない」と見抜いてくれる。何しろ彼女たちは人を判別することに関してはプロであり、天才なのだから。
そして、ようやく警戒心を解いてくれたら内側へと入てくれる。遊びの料金は前払いである。一応、言っておくと30分で8000円というのが相場である。ただし、30分が20分になったり、8000円が、1万円になることもある。逆に、記者は一度だけ7000円で遊べたことがある。どうしてディスカウントしてくれたのか今でも謎だ。だからフーゾクは面白い。
二階に上げてくれて、個室に案内される。と言ったって大抵は、ルームナンバーを教えてくれるだけで、後はこちらが言われた部屋に勝手に入って待つ。四畳半ほどの広さの個室には、デ〜ンとベッドが置かれていて、その脇にカラーボックスがあるくらい。マジにヤリ部屋といった感じだ。
待つこと五分もするかしないうちに、女の子が「コンニチワ〜」とか「コンバンワ〜」と挨拶しながら入ってくる。それが、時によると鄙(ひな)には稀なといえるような若いお嬢であったりする。
先日も御当地を訪れた友人によると、若干歳は行ってるけどビックリするようなお嬢が相方に来てくれたという。このようなことがままあるのが御当地のチョンの間であって、それ故に潰れないのだろう。料金が安くて、タマにビックリお嬢がいる。これが御当地花畑の遊びなのだ。
そして三度目の余談、久留米は筑後川の流れる筑紫平野で一番の都市である。その豊かな水を使っての醸造業が盛んで伏見、灘(なだ)と並んで「日本三大酒どころ」として知る人ぞ知る土地だ。
「花の露」同じ酒蔵の大吟醸「鴻臚館(こうろかん)」または「山の壽(ことぶき)」といった旨い地酒を一杯ひっかけてから遊びに出かけるのは実に楽しい。