日本全国を旅する風俗評論家・岩永文夫氏が各地の裏風俗や温泉、酒、うまいもの、観光地などを紹介する旅情いっぱいのコラムです!
38.松島新地(大阪府)
記者は、ここ十年来仕事は別にして遊びでは大阪の飛田新地には行っていない。だが西区にある松島新地には足繁く通っている。
市内の新地で遊ぶなら松島なのである。それは何もプレイ料金が、飛田は20分で1万6000円なのに対して松島が同じく20分で1万円と平均6000円も安いからという理由ではなく、また飛田にあるチョンの間の店が100店以上もあるのに、松島の方が60軒ちょっとと数も少なく、それに合わせてギャルの数も少ないけれど遊び場としては規模的に手頃だからという理由からでもない。
ただし、飛田と松島どちらの新地も、そこで働くコたちは気分しだいで両方の街を行ったり来たりしているコが多いので、ギャル質はさほど変わらない。
しからば何故、記者は松島コースを選ぶのかというと、松島の街の雰囲気や、佇(タタズと読みませう。でもタタないという意味ではもちろんないヨ。念のため)まいは、この数十年間それほど変わってないからなのだ。昔の色街の風情が漂っている。
いまや一方の飛田は、裏も表もあわせてフーゾクの世界ではニッポン随一の遊び場になってしまっていて、派手で明るくてメチャ元気な色街になってしまっている。こんな風情のないところで遊ぶほど記者は暇ではない。
やはりフーゾク遊びとは、花柳(かりゅう)の世界で遊ぶのが本来のもの。花は明るく派手やかに、でいいけれど、忘れてならないのは柳のほうだ。柳は暗くてしめやかなもの。このどちらもが揃っていなければ、色街でも花街でも遊び場でもないのである。まして悪所でもネ。
何処にも街としての陰りがないなんて、クリープの入らないコーヒーみたいなものなのだ。なんて古い宣伝コピーを今さら引き出すまでもないことだが。 松島には、どことなく取り残された街のような陰りが現在もあって、それでいてどことなく遊び場所としての放恣(ほうし)な雰囲気が漂っている。これがたまらないのだ。遊ぶっていうことは、なにも射精が全てということではないのであって。そこに男と女の、ほんの一瞬かもしれないが心と身体のふれ合いがあるってこと。それを味わうのが大人の遊びなんだよネェ。
そんなこんなで、このちょいとばかり影があって、少しのんびりしていて、ちょいと晴れやかなところもある松島の新地が記者は好きなのである。
さて街の中を歩いてみるとチョンの間業に励んでいる店は誰が見てもすぐに分かる。何しろ家の玄関を営業中は四六時中開け放っていて、そこにはパイプ椅子に座ったオバちゃんがいる。さらに玄関の奥には女の子が時にはヒマそうに、時には道行く男を誘うような表情をしながら上がり框(かまち)にペタリと座ってこちらを眺めている。これが何とも風情のある光景でしょう!
「オバちゃん 何ぼや?」「へえへえ ウフフ」微妙な表情を浮かべながら、こちらを品定めするようにして話に乗ってくる。
この時に、オバちゃんばかりを見ているのは修行が足りない証拠。値段を聞きつつ、一応のディスカウントの交渉に入ったときに女の子がどんな表情を浮かべるのか。これを瞬時に見て取るのだ。
ここで女の子の性格やサービスぶりが簡単にだが窺(うかが)えるのである。ニッコリするのか、イヤな顔つきをするのか瞬間だけど、その反応を見極めよう。これも遊びの面白さの一つといえる。
それと、ついでだから言っておくと、よく店の前を通っている最中に中から客が送り出されてくるところに出くわすことがある。その際には、必ずチラッとで良いから出てくる客の表情を眺めてみよう。あまりジロジロ見るのは失礼だから、チラッでよい。
すると今まで相手をしていた女の子の対応が良かったのか悪かったのかが手に取るように分かる。「どうも有り難う また来るよ」などと客がニコニコ笑顔で、その女の子と別れるようなら。このコは間違いなし。Eコである!
となったら、心に留めておこう。そしてさらに街の中を歩き回り覗きまわってみる。決して急ぐことはない。なにしろ、ここはチョンの間街である。いくら客がついたって、ものの20分もすれば女の子の仕事は一丁あがりぃ≠ネのだから。
それよりもジックリと色街の雰囲気を味わいつつ他にもっとオキニのコはいないかなと探して回ろう。これができるのも松島のEところ、最近の飛田ではチョイきついよネ。つまりマイペースで遊び全般を楽しむことが大切なのである。
ところで松島新地のすぐ近くには、あの変態ストリップ劇場とも異名をとった有名な「九条OS」があったのだが、どうやらつい最近になってクローズされてしまったようだ。
これでまた一つ昭和のフーゾクが消えてしまった。合掌!
記者取材・執筆直後に大阪府警の手入れが同地区の1件にありました。
ただし、それ以外のお店はいまだに営業を続けております。(記者談)