日本全国を旅する風俗評論家・岩永文夫氏が各地の裏風俗や温泉、酒、うまいもの、観光地などを紹介する旅情いっぱいのコラムです!
37.天童温泉(山形県)
ニッポンは火山の国であって、地震の国であって、温泉の国でもある。
実はナニを隠そう、この案内人も温泉大好き人間なのである。しかしながら、温泉大好きと言っても、それにはイロイロな含みがある。本当にマジに、ただただ暖かい温泉に浸かることだけが好きな人もいれば、そんな、お湯なんてどうでもよくって、ただただ温泉場の遊びが好きだという人もいる。
どちらかというと案内人は、後者のほうであって、温泉場の遊びがメチャ好きなほうである。そのせいか、仕事のせいかはさておいて全国の歓楽温泉という温泉には、案内人それこそ隈なく出かけて行って、浸かり飲み食い・・・を体験してきたものだ。
それらの温泉のなかには、個性的な、はたまた風変わりでユニークな温泉が幾つもあったりして、それらを探訪して廻るのは結構楽しい作業ではある。
それにつけても、山形県にある天童温泉という比較的歴史の浅い温泉は、なかでもかなりユニークな歓楽温泉の一つと言えるかもしれない。
なんてったって、こちらは町からして個性的なのである。天童と言えば、まず思いだすのは、将棋の駒作りニッポン一ということだろうか。いや、それ以外に何があると言われても困ってしまうくらいに個性のない、わずか人口六万人ちょいとの地方都市なのだ。つまり個性があまりにも無いことが個性的な、とても皮肉な町なのである。
それほど小さな町なのに新幹線は止まる、何故でしょう。歓楽温泉郷だからなのでしょうか。ともかく駅を降りても、さほど温泉街を思わせる格別な看板もイルミネーションもない。実にひっそりとした東北の町なのである。何しろ人口六万人ちょいとなのだから。
で、駅を出て目の前の広い道路を迷わずに進んでいくと、もしもキョロキョロ脇目も振らずに歩いてしまうと、そのまんま町の中心街を30分もかけずに通り過ぎてしまうほどなのだ。これって一体どういうこと、この道路の右手には二十軒近くのホテルや旅館が建っている。そして左手の奥の倉津川に至るまでの一帯は町一番の盛り場である。
なのにうっかりしていたら、そのまま見落として行き過ぎてしまうほど控え目な町なのだ。でもこれは、真っ昼間のことであって、一転夜ともなると特に進行方向左手の鎌田本町の飲み屋街は俄然賑やかになる。
と思うでしょう?でもそれほどではないのだよね、他の歓楽温泉と較べれば。でも、この一画には200軒にのぼる飲み屋、スナック、バー、パブがある。それにビックリ!マジに天童という町は、どこが温泉街で、どこが歓楽街かが分からないのだ。
でも、うっかりしたら裏フーゾクにかけては東北でも随一なのではないかと思える。なにしろ、鎌田本町の飲み屋街には連出しスナックをはじめにして、ホンサロもあれば、チョンの間もある。それにこちらの連出しスナックは、その夜に特別な約束が出来なかったコンパニ姐さんがフラリと店にやって来てバイト感覚で付き合ってくれたりするのだ。
それで一晩の間に、それこそ数え切れないほど求められたりして、古い表現だが「お天道様が黄色く見えてしまう」翌朝を迎えさせられることもあるのだ。
一方、ホンサロでは店内が細分化されていて、そこで一発できちゃうという、まるでチョンの間的な店もあるのだ。どうです、このくらい天童の街は無個性であって、個性的な町なのであります。
そういえば夜になると、飲み屋街のなかの「ぎおん小路」などのあたりには赤、桃、黄色といった原色ビカビカのネオンサインや看板が二階建ての店先の屋根の上におっ立てられていたりして。これはこれでビックリだ。
つまり天童という町は、それまで何もなかった将棋の駒作りの町に突然お湯が噴き出して急遽歓楽温泉になってしまったのだろう。それで、後追いでスケベの皆さんがやって来た。だから温泉客は湯治客とか観光客とかは少なくて、スケベ目的の団体さんがほとんどだったりするのではないのだろうか。
それでもって、気になるお遊びのほうのお値段なのだが、最も安いのはホンサロ風チョンの間である。これは全てを含んで大一枚から一枚半で、事足りるようだ。こちらで遊びたいムキにはサロンの店先に立っている呼び込み氏に直接話をつければよい。
で、もう少し色を付けて遊びたいムキには、連出しサンがいる。こちらは街の中のそれらしき店(スナック、パブ、バーに一杯飲み屋でもある)に見当をつけていきなし飛び込んでみるのも面白い。もし見当が外れて、連出し店でなければビール一本も飲んで出てくればよいし。その店のママなりマスターに、しかるべき店を教えてもらうという手もある。さもなければ土地の事情通であるタクシー・ドライバー氏か、宿の仲居さんか、ホテルのフロント係氏に聞くのもよいだろう。
こちらは大抵が一時間のプレイタイムで2万円から2万5000円といったところ。ただしホテル代は別である。
蛇足だが、天童の連出しサンには地元の素人ギャルが時として混ざっていることがある。これはもうスケベ一心でバイトをしているわけで、こちらでも黄色い太陽を次の朝に見られるかもしれない。参考までに。
ということで無個性な地方温泉都市の天童は、とても個性的な歓楽温泉都市でもあるのだ。マルッ!