日本全国を旅する風俗評論家・岩永文夫氏が各地の裏風俗や温泉、酒、うまいもの、観光地などを紹介する旅情いっぱいのコラムです!
32.浅虫温泉(青森県)
実に何とも風光明美な温泉町である。ここはむつ湾に面した青森県の浅虫温泉なのだ。
目の前には形のよい小さな小島が湾内に浮かんでいる。この時期の浅虫のある青森市は北国の遅い春から一気に抜け出して、初夏の透明で爽やかな空気のなか緑色の初夏を迎えている。
筆者、今回は夏の始まりの北海道に渡って、函館の奥座敷とも言われる湯の川温泉に行ってコンパニ姐さんたちと楽しくお遊びをしようと思いタチ、旅に出たのだが、どこでどう取り違えたのか、北海道の一歩手前の青森で途中下車、同じ奥座敷でも青森の奥座敷あの浅虫温泉に来てしまったのだ。やはり東北新幹線ではなく飛行機で行けばよかったのかなあ?
というのも、7月の15日に浅虫の温泉街で「ゆかたDE温泉まち歩き☆ファッションショー」なるイベントを“温泉地賑わいづくり実行委員会”という団体が主催して行うという情報を小耳に挟んだからである。
行ってみると、当日は確かに浴衣姿の津軽美人たちが約50人ほど手には団扇を持ちながら、いかにも涼しげでちょいと色っぽい格好をして温泉街のなかを歩きまわっていた。ウ〜ン 素人の女性たちの浴衣姿というのもEものである。
最近は、浅虫温泉は他所の温泉街よりも積極的に観光客の集客に力を入れている。結構なことである。
ヨ〜シ それなら何も海を渡らないで、こっちで遊んじゃえ、ということに。筆者は勝手に行き先を変更してしまった。
浅虫といえば、地元では千年以上の歴史を持つ温泉として誰一人知らない人はないほどの人気のある湯治場であったが、全国規模で、その存在が知られるようになったのは、この三十年ほどのことである。
それまでの青森と北海道の函館間を結ぶ青函連絡船に取って代わって青函トンネルの工事が始まった1980年代に、仕事の手が空いた工事関係者がゾロゾロと昼夜に関係なくご当地に遊びに来るようになってからのことだ。
何しろ津軽海峡の海の底でアナを掘るオジさんたちが大挙して休みになると、陸上のアナを求めてやって来る。これで浅虫は盛り上がった。青森市内はおろか東北六県をはじめ北海道からも腕に自慢の、いやマンに自慢のご婦人方が集まってきた。
昼から夜からホテルと旅館合わせても十数軒しかない小さな温泉町は、トンネル掘りのオジさんと、そのお相手をするお姐さんたちとでひしめいた。
ついでに、その噂を聞きつけた筆者のようなスケベが全国から視察にやってきた。客が多ければ、女の質は当然上がる。そんな浅虫ゴールデン時代が以前にあった。
だが、ここにきて新幹線ができて新青森までダイレクトに行ってしまうようになってしまった。このままでは、この温泉町は昔のような鄙びた湯治場になってしまう。と思った温泉関係者や観光事業者の皆さんが、再度の町起こしに取り組みだした。その意気が嬉しいねぇ!
て言うことはもちろん、それなりに遊びのほうにだって気配りはしているはずだ。と遊び慣れた筆者は考えた。でもっての青森途中下車の行く先変更となった次第。
そこで、御当地の遊びとなるとやはり温泉地名物のコンパニオンとなる。それ以外では街の片隅でこっそりと営業している一発屋。さらには連れ出しスナックぐらいだ。
でもってコンパニ姐さんと飲みっこをして元気に宴会をやるのなら、宿泊をする先のホテルにでも頼めばいい。しかし、それだけですませたくないと、青森のホタテとかホッキとかではない貝の味を何かと楽しんでみたいとする人には、大いに役立つのが宿の仲居さんなのだ。
「遊べるコンパニオンいないかなあ」とか「最後まで面倒見てくれるコっていないの」と仲居さんに聞いてみよう。その時、必ず忘れてならないのはチップである。千円でも三千円でもよい。ともかくチップを忘れずに、なのだ。
簡単に触れておくと、ごく普通のコンパニオンを呼べば、花代は2時間で1万1000円が相場だろう。これが最後まで付き合ってくれるコとなると4万円前後となる。
それ以外の一発屋とか連れ出しスナックとなると3万円見当とみられる。小さな温泉町ではあるけれど、浅虫は温泉復活の意気に燃えている町だけに、今後が楽しみなところなのである。もちろん色気のほうだって、深く静かに潜行しつつこれからイロイロと現れてくるのではないかと筆者はみている。
むつ湾を前にして、八甲田の山々を背にして、最高に自然に恵まれたご当地だから、イカ、ウニ、ホタテさらにはノドグロ、イシナギ、キチジといった魚などを海から。豊富な山菜などを山から。ともかく旬の食べ物に事欠かない絶好の地である。
そして、以前は「喜久泉」と言われていた現在の「田酒(でんしゅ)」というキレのよい含み香と爽やかなコクのある地酒がある。ただこれは筆者の主観ではあるけれど、どうも酒の名前が変わってから美味い酒であることに変わりはないのだが、ちょいと甘くなったような気がしてならない。これはいらぬこと、失礼!
ま、地元の気のきいたつまみを突っつきながら旨い酒を適当にやって。それから、美味しいカイの味でも堪能しましょうや。