裏風俗ぶらり旅 | 松島新地　大阪

　いま、ニッポンの表も裏も併せてすべてのフーゾクの中で一番楽しく遊べるスポットは、おそらくこの連載では初めて取り上げるく大阪の裏フーゾクだろう。というのも首都圏や大阪、神戸あたりは他所でも何かと紹介されていて、あえて書くのもさして新味がないのでは、とこれまで遠慮してきたからである。
　でもウラは裏、面白いものは面白い。そこでしっかり紹介するのも“ヨロシイ”のではないかと、新年そうそう思いタッテしまったのだ。というわけで大阪にある三大新地の飛田、松島、今里の中から一番風情のある松島新地のチョンの間でも取り上げてみようかなってことに。
　何しろ最近では大阪の“チョンの間”街が何かと話題になっていて、イロイロに紹介されているのは事実だ。言ってみればブームだね。
　今から40年ほど前は考えられないことだった。当時は、飛田でも松島でもかつての大阪の“新地”と呼ばれる色街は、どこでも夕暮れになればパタパタと黒くて小っちゃなコウモリが街中を飛び回り、さらに夜ともなれば通りには人影もまばらに、ぼやけた明かりだけが灯っている。それほどまでに寂しく凋落した色街が当たり前だった。
　それが、いつの間にか大阪中のソープランドが全部潰されてしまい、それに取って代わる“チョンの間”が、昔からある遊廓や赤線の跡に雨後の竹の子のように出現してきたのである。それが飛田であり、松島であり、今里の新地なのだ。それ以外にも信太山新地や滝井新地。お隣の兵庫県の尼崎にあるかんなみ新地などがある。

大阪市営地下鉄九条駅付近
（画像：ウィキペディアより）

　大阪の町にはもともと江戸時代から新町という遊廓があったのだが、明治時代になって新たに西区の河口というか港の近くに作られたのが松島の遊廓だった。こちらは都心から遊びに行くにも、尼崎、神戸あたりから出かけるにも交通の便が良い。それで一躍人気の夜遊びスポットとなった。初期のころの一発代は女の子によって上中下の三ランクがあって、最も安いランクで四銭だったという。
　ところがところがである。1958年（昭和33年）に売春防止法が施行されて以来、こちらの商売（娼売）が立ちいかなくなってしまった。それで気が付いたら、コウモリパタパタ街灯ぼんやりの街に。と思っていたら、ソープが無くなってのここ十年来のチョンの間ブームである。街はすっかり生き返った！

「兄ちゃん　遊んで行きぃ」　
　松島新地の店は外観からすると、まるで古い料亭の造りである。そんなレトロな風情のある戸口から声がする。振り返ってみると、そこにはオバちゃんがニコニコ愛想笑いをしながらパイプ椅子に座ってこちらを見ている。その横には若い女の子が石油ストーブを前にして座り、こちらもニコニコしながら見ている。
　といっても、ここですぐに店内に入ることは得策ではない。新地の中は、それほど広くはないのだからひと渡り眺めてまわってから遊ぶ店は決めればよいのだ。なにしろ“チョンの間”とは、その名前の通り遊びの時間が短いのだから。焦ることはない！　ともかくプレイ時間は20分なのだ。それで１万円。
もし相手が気に入れば、その場で延長すれば話はつくのだから。
　御当地は飛田新地に比べると街の規模は若干狭いけれど、それにしても女の子の数はそれなりにそろっている。今では取り決めで店頭にはひとりしか座らせることができなくなっている。14、5年前に催された「花博＝ハナハク」までは、いつでも2、3人の子が入口に並んでいたものなのだが。
　それで、女の子を選んで店に上がると、2階にある3畳ほどの部屋に通される。室内にあるのは、薄くて、ちょいと湿っぽい（シトッポイと読みませう）センベイ布団に小さな丸い座卓。それとティッシュの箱と場所によっては姫鏡台。それっきりだった、ものが最近になって布団がベッドになったり、座卓がテーブルになったり。ついでに部屋の砂壁が洒落たカラーパネルになったり、床が畳からフローリングに変化したりで。それなりに景気は良さそうである。

九条OS
（画像：ウィキペディアより）

　明治の初めから遊廓、赤線そしてチョンの間と歩んできた松島新地は大阪市の西区にある。その昔なら市電で、現在なら地下鉄でいとも簡単に遊びに行ける。その意味では全国のフーゾク街のなかでもベスト・スポットの一つに挙げられるだろう。
　現在なら市営地下鉄の中央線の九条駅で降りれば一発でＯＫ。港の方向へ向かう進行方向左側の出口を出たところのアーケードの横手にくっつくようにしてあるのが目指す新地だ。迷うこともない。もし車で行くのなら阪神高速の16号大阪港線の九条出口になる。この大阪港線の真下を地下鉄が走っているのだ。
　ところで港に向かって、この道路というか線路というかを挟んで左側に新地があるとすると、右側に1951年から2006年にかけて「九条ＯＳ」というユニークなストリップ劇場があった。ひところは全国の小屋に専属のストリップ嬢というかお姐さんを送り出すほどの勢いを持つ劇場だった。道を挟んで新地と劇場。松島あたりは大阪の港近くに栄えた楽しい遊び場であった。
　そして一方の松島は徐々にだが、かつての色街の元気を取り戻してきている。なにしろ20分で１万円だもんね！