日本全国を旅する風俗評論家・岩永文夫氏が各地の裏風俗や温泉、酒、うまいもの、観光地などを紹介する旅情いっぱいのコラムです!
64.森岳温泉(秋田県)
筆者のように長年風俗記者を続けていると、時には思いもかけないような耳寄り“裏風俗”情報が入ってくることがある。
そんな部類の話である。と言っても、その話が入ってきたのは今から30年以上も前のこと。以来、筆者は何度もその地に出かけて行っては楽しい取材を何度も経験するようになっている。もちろん現在に至るまでだ。
しかし、ここは筆者の持つ隠し玉ということで、あまり多くの機会に紹介をするということは今までしていないのである。一人でムフフと含み笑いをしながら、こっそりスケベを楽しむタワシのいや間違えた、ワタシの“裏風俗”スポットの一つなのだ。
その場所は秋田県のほぼ中央部の日本海よりにある森岳温泉という。ちょいと眺望のE場所から眺めると、今はもう消え去ってしまった日本第2位の大きな湖だった八郎潟の埋め立て跡の広大な田んぼが広がって見えるところである。トンボやチョウチョウがたくさん飛んでいます。ついでにカエルもね。
そんなのんびりとした田園風景とは関係なく、戦後の昭和27年に田んぼを掘って石油を採掘しようとボーリングしていたら。なんということでしょう、そこから石油ならぬ温泉が出てしまったのである。ということで御当地になんとなく歓楽温泉街ができてしまったのです。
でも歴史も浅いし、温泉の規模もそれほど大きくはない。とあっては知名度もイマイチなのは仕方がないこと。しかし地元の秋田市や能代市ではそれなりに隠然とした人気があって、ジモティがこっそり遊ぶ時に使う“裏風俗”。隠れた遊び場なのである。
実は筆者にこっそりと「地味だけど面白い場所だよ」と耳打ちしてくれたのも地元のマスコミ関係の男だった。それも現地に行ってみて納得したのだが、30年ほど前には10軒にも満たないホテルがひっそりと立ち並ぶほどの温泉街。いまではさらに規模が小さくなってホテルは数軒しかない。
そして、遊び方も“お酌さん”と呼ばれる芸者のお姐さん(もちろんほとんどが枕芸者)が、お相手をしてくれる。彼女たちの多くはすぐ近くの能代市のほうからやってくるようである。もちろん、そのなかには秋田生まれの正真正銘の秋田美人もそれなり含まれていたりして。ただし若干お歳を召しているお姐さんも目にするが。
多くの場合、こちらでは彼女たちをこっそり紹介してくれるのは部屋付きの仲居さんの場合が多い。なにも外部のタクシー・ドライバー氏も必要ないし、ポン引きさんの世話になることもない。時によると“お酌さん”の人数がそろわなかったりとか、また御自身お小遣いが欲しかったりとか、そうではなくとも御自身の身体が疼いて仕方がなかったりすると部屋付きの仲居さんが「私でどう…?」なんて誘ってきたりもする。
そう、こちらでの“裏風俗”遊びは規模も小さいこともあって仲居さんとの交渉によって、ごく内輪でコトを進めるのが何となく便利なのだ。ホテルの一室でチマチマと…が以前からの御当地流の遊び方なのかもしれない。
ついでに言っておくと、お姐さんとの交渉費は2.5万円ほどと見ておけばよいだろう。これにお座敷で遊ぶとなれば花代が一座敷(ヒトザシキと読みませう)120分で1万円ほど必要になってしまう。
これでは、どうも割高だというムキは街へ出ましょう。ホテルの付近には何軒かの飲み屋と、それよりも多くのスナックがしっかりと並んでいる。たとえ鄙(ひな)びた歓楽温泉街とはいってもあるものはあるのだ!
こちらで話をつければお座敷代が必要ないだけに割安で遊べる“裏風俗”となる。ただし、こちらに並んでいるすべての飲食店がすべてスケベができるというわけではないことはしっかり頭に叩き込んでおこう。でないとヤヤこしいことになることもあるからだ。
秋田といえば、やっぱしキリタンポでしょう。でもこれは秋から冬にかけての季節の物であって、これからの時期にはちょいと合いません。そこで筆者おすすめの一品といえば、なんと言ってもあのヌルヌルツルリの食感がたまらないジュンサイでしょう。これの酢の物をアテにして地酒の「太平山」で一杯。申し分がありません。このような鄙の遊びもタマにはよいのでは?
それはそうとして森岳温泉に出向くには、これも鄙びていてEねぇ。今の時代猫も杓子も「シンカンセン、シンカンセン」と騒ぐなかで。ごく普通のJRの特急しか通っていない奥羽本線で秋田駅から特急で50分で行くしかない。ま、ノンビリと汽車旅を楽しみながらのアプローチ。
これもまた悪くはないねぇ。